用語の知識
■ ISOにおける技術文書
(1) ISOにおける技術文書
技術文書とは、IS(International Standard:ISOの正式規格)発行に至るまでの段階において、早急に文書化すべき事項や正式規格にまで至らない事項をISOにおいて明確に位置付けし、正式文書として発行するものである。
ISの発行までには多くの検討と時間を要するが、その過程において文書化が必要であること、また、正式規格としての発行に至らないものが多く存在するためにそれらを文書化する必要があることなどにより、暫定的な規格や関連文書として作成されるもので正式規格とは異なる文書である。
技術文書には、以下の4タイプがある。
- ISO委員会で技術的に合意されたことを示す規範的な文書。
技術開発途上であり当面の合意が得られない場合、また、ISO/TSほどの合意が得られない場合、TC/SCは特定業務項目をISO/PASとして発行できる。
- WGで合意の得られたことを示す規範的な文書。
IS作成に向けて技術的に開発途上にある、必要な支持が得られないなどにより当面の合意が不可能な場合、TC/SCは特定業務項目をISO/TSとして発行できる。
- 通常規範的な文書として発行されるものとは異なる情報を含んだ情報提供型の文書。
委員会が単一の作業項目もしくは複数の作業項目の支持の元に情報を集めた場合、その情報をISO/TRの形で発行することを中央事務局に要請できる。中央事務局はTMBと相談のうえ、TRの発行を決定する。
※ 同一名称であるが、TRは1999年以前のTRとは異なる(従来のTR3に相当)。
(2) 正式規格との相違点と技術文書の規格としての位置付け
4タイプの技術文書のうちTSやPASは、あくまでも暫定的な規格であり、IS(International
Standard:ISOの正式な国際規格)とは異なるものである。
- ISOの正式規格であるISとの相違点は、主に以下の点である。
-
- 見直しの期限(有効期間)が3年である(ISは5年)
- WTO協定対象とならない(ISは対象)
- 作成に至る手続きは基本的にはISと同様であるが、最終的な承認段階は省略される
また、規格としての取扱いは下表のような位置付けになっている。
−ISOとCEN(CENELEC)の成立した規格の取扱いに関する比較−
| 項目 |
|
ISO |
CEN(CENELEC) |
ENV
(Vornorm) |
| IS |
TS/PAS |
EN(HD) |
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| 採用期限 |
− |
− |
6か月以内に国内規格として採用 |
6か月以内に国内規格として採用 |
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| 強制力 |
なし (WTOとの関連あり) |
なし (WTOとの関連なし) |
国内規格として強制 |
国内規格として強制 |
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| 規格の表現 |
具体的な表現は少ない |
具体的な表現は少ない |
国内規格として採用するため具体的 |
国内規格として採用するため具体的 |
|
既存規格の
取扱い |
各国の対応に従う |
規格ではないため特に影響なし |
既存の同種規格がある場合には、撤回し、ENを規格としなければならない |
既存の規格を使用することができる |
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| 有効期間 |
少なくとも5年ごとに見直し |
3年以内に見直し |
5年以内に見直し |
3年以内に見直してEN又は撤回、又は期間延長の投票をする |
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| 採用方法 |
国際規格に準じた国内規格を作成 |
採用は各国の判断による |
ENがそのまま国内規格となる |
ENVがそのまま国内規格となる |
|
<参考技術文書のタイプと従来のTR>
ISOのTMB(テクニカル・マネージメント・ボード)により1999年1月に制定された現在の技術文書は4つのタイプに分類されているが、それまでの技術文書はタイプ1、2、3の3種類のTRとして発行されていたものである。
−技術文書のタイプと従来のTRとの関係−
現在(1999年1月改訂後)
技術文書 |
従来(改訂前)
TR(テクニカル・レポート)*2) |
| 文書タイプ |
備考 |
発行時の承認条件 |
文書タイプ |
備考 |
PAS
一般仕様書 |
特定業務項目をISO/PASとして出版
新技術文書として追加された*1) |
Pメンバーの投票数の単純過半数が必要 |
− |
− |
TS
技術仕様書 |
特定業務項目をISO/TSとして出版 |
Pメンバーによる3ヶ月投票で2/3の承認が必要 |
TRタイプ1 |
規格に関連するTR |
| TRタイプ2 |
TR
技術報告書 |
ISO/TRの形で発行することを事務局に要請 |
Pメンバーの投票数の単純過半数が必要 |
TRタイプ3 |
参考事項報告書 |
- *1)新文書として追加されたPASは、主にISO/TC組織外で原案が作成され、迅速な承認を求めてISOに持ち込まれたか、あるいはISO組織の内部で原案が作成された文書である
- *2)改訂後の新たな技術文書内にもTRという同一の名称があるが、従来のTRと新TRでは内容が異なる
従来のTR(Technical Report)とは
- 1.タイプ1(TR1)
-
- 承認段階に到達するために必要な支持を得られなかった一種のFDIS
- TCは、Pメンバーの単純多数決で、その文書をTRの様式で発表すると決定できる
- 必要な支援が得られなかった理由をTRの前文に記すことが必要であった
- この種の文書は、現在TS(技術仕様書)として取り扱われる
- 2.タイプ2(TR2)
-
- 理由の如何を問わず、案件が標準化案となるまでに熟していない場合に発行される
- 問題の案件がまだ技術開発途上である場合、また理由が何であれ、ある国際規格に関する合意の可能性が即刻ではないものの将来的にある場合、TCは現時点で、代わりに技術仕様書の発表を決定することがある
- 3.タイプ3(TR3)
-
- ISO標準の通常の範囲内にない材料に関する純粋な参考報告書である
- Pメンバーの単純多数決で、ISO中央事務局の事務局長に、データをTRとして発表するよう要請することを決定することができる
- タイプ3のTRが現在のTRに相当する
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