| 道路交通のみならず、幅広い分野で威力を発揮するITS
−これからの交通におけるITSの役割について、どうお考えですか。 ITSの概念は道路と車相互の高度情報化という分野からスタートしました。 その点で、渋滞・事故・環境という、現在抱える道路の課題解決に向けて切り札的役割を果たすことは間違いないでしょう。ただし、ITSの持つ可能性はその範疇にとどまりません。たとえば、鉄道や航空、船舶をもふくめた交通全般に大きく貢献することになるはずです。 情報の高度化により、まったく違うシステムが稼働することになるのは、これまでの経緯を見ても明らかです。 その良い例が新幹線や新交通システムです。レール上を走るという点を除けば、高度に情報化された新幹線などと在来の鉄道とは、まったく別のシステムで運用されていると考えたほうが正しいわけです。 −その意味では、産業構造を変えてしまう可能性があるわけですね。 そうです。アメリカの航空会社を見ると、ここ十数年で主力航空会社の顔ぶれがガラッと変わりました。 その大きな要因は、CRS(Computer Reservation System)の導入です。CRSには予約はもちろん、ホテルやレンタカー情報、さまざまな観光情報まで取り込まれています。 その結果、高度な情報をいち早く取り入れた新規の航空会社が老舗を駆逐したのです ITSも同じように、多くのビジネスチャンスを創出するとともに、産業構造を変えることになるでしょう。 しかし、そうした大きな可能性は理解できても、そのための技術開発の方向性はまだ模索状態です。大きな視点からのシステムアーキテクチャを構築しないと、多くの無駄が生じてしまいます。きちんとした方向づけが急務ですね。 “ITS仕様の高速道路”を整備するチャンス −21世紀の日本の道路網とITSはどう係わっていくべきでしょうか。 21世紀は日本の道路整備にとって大きなチャンスといえます。たとえば第2東名などの新たに整備する高速道路は、“ITS仕様”にすることが可能です。この時点で渋滞や凍結などの道路情報や気象情報などは、より精度の高い情報になります。また、既存の高速道路や一般道路なども段階的にITSを取り入れた道路整備を行っていくべきです。 これが実現すれば交通サービスは大きく変貌するでしょう。人や物の移動は、非常に低コストで安全性や定時性も高くなります。交通サービスが変われば新たな需要が喚起され、いろいろな面から生活や産業に大きな影響を与えることになります。 このように日本の道路網においてITSが推進されれば、地域間格差も縮まることになります。これまで交通上のハンディキャップを背負ってきた中山間地の地域活性化に直結します。 −高速道路の料金所でETCの導入が間もなく始まりますね。 そうですね、ETCを例にとってもITSの効果は容易に想像がつきます。料金所渋滞の緩和はもちろんですが、時間制の料金体系も容易に実現できます。すでに20年以上前からアメリカの都市鉄道で採用されているような、ピーク時は高く、オフピーク時は低い料金システムですね。 また、インターチェンジの建設が容易になることも大きな効果をもたらすでしょう。これまでのダブルトランペット型などのインターチェンジは、1ヵ所の料金所に車を集めるために必要でした。しかし、ETCによりそれほど土地も必要のないダイヤモンド型でシンプルな出入口をもっと短い間隔で作れるようになります。このことにより、沿道の地域の利便性は拡大し、地域の活性化への影響も期待できます。 インフラ整備の推進には産官学の協力が不可欠 −ITSの展開に向けてのインフラ整備についてはどうでしょうか。 これは大変難しい問題です。情報の高度化した社会において、人々がどう活動したいか、インターモーダルな交通サービスをどうデザインするか、また道路構造や道路利用をどう変えていくか それぞれでインフラ整備の仕方は異なります。しかしまだ、ITSもふくめ、すべての情報分野の可能性が想定しきれていないわけです。とはいえ、インフラ整備へ向けてのポイントはいくつかあります。 ひとつはいろいろな可能性のなかで、ベーシックなものは何かという視点。もうひとつは国際的な仕様を意識することです。その上で、できるかぎり幅広い分野で応用できることを考えることが大切です。そのためには、行政と産業界、学会という産官学の協力体制が不可欠です。
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