東京大学生産技術研究所長
坂内 正夫 氏
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情報通信はこれまでのスーパーマーケット型から専門店型へ −情報通信の将来的な展開について、どうお考えですか。 私は今が大きな転換期と考えています。研究者の立場からみても、21世紀へ向けて情報通信の分野は大きく変わるでしょうね。ひとことでいえば、“社会のなかで何ができるのか”がポイントになっていくでしょう。これまではとかくきれいな学問体系をつくることに力点が置かれてきました。情報通信は本来道具であり、目的ではありません。しかし、いつのまにか優れた情報基盤やシステムをつくりだすことが目的になってしまっていたのです。基本に戻る時期がきました。 アプリケーションとシステムの関係でいえば、先に情報システムが構築されたうえで、そのシステムに合うアプリケーションのみが実現しがちでした。これでは社会のニーズとズレが生じてしまいます。しかし、これからはまずアプリケーションありき、です。つまり、社会ニーズに応えることを優先してシステムをつくることです。 −インフラとしての情報通信システムはニーズから導かれるようになるということでしょうか。 そうです。本来、情報通信は多彩なアプリケーションを実現するための道具です。情報の流通という側面からは、これまでは安く大量に何でも発信できることがポイントでした。いってみればスーパーマーケット型だったのです。しかし、これからは素材に独自の工夫を加えた専門店型の占める比率が高まるでしょう。社会に貢献するさまざまなアプリケーションを効率よく実現していかなければなりません。 2年半前から産学官一体のITSプロジェクトをスタート −ITSでは高度な情報通信システムが欠かせませんが。 そうですね。先ほど申し上げた意味で、情報通信が具体的に何ができるかという視点からみると、ITSは非常に興味深い領域といえるでしょう。ITSには渋滞を減らし、交通事故を減らし、環境への負荷をできるだけ少なくするという、社会的目的があります。その実現へ向けて最適な情報通信システムを構築する必要があるわけです。それはまさに情報通信の分野がこれから進むべき方向性と一致しています。我々はITSの実現へ向けて、よりよい道具としての情報通信システムを提供しなければならない義務があると考えています。 −すでに具体的な取り組みが行われていますか。 ええ、2年半ほど前から、産学官が一体となったプロジェクトを生産技術研究所内でスタートさせています。「ITSに関する基礎的先端的研究」と題して、私を含めた情報通信分野、交通工学の分野、土木建築の分野から専門家が集まり、さまざまな研究を進めているのです。もともとこの生産技術研究所では1つの分野にとどまらず、複数の分野の研究を融合してさらにワンランク上のレベルへ進もうとというスタンスが根づいています。ITSはまさにそうした分野であるわけです。 従来の研究開発は研究分野にあたる縦棒が1本で、横棒をアプリケーションに見立てたT型のものでした。しかし、ITSは縦棒が3本の鼎型と考えています。アプリケーションを支えるのは、場=道路、モノ=自動車、そして情報=情報通信の3本の柱です。 さまざまなアプリケーションとシステムを受けとめる共通基盤(プラットフォーム)の形成が重要に −ITSのマルチアプリケーション化と実配備が進むなかで、通信システムはどうなっていきますか。 アプリケーションを統合化できる通信システムは必要です。いくつものアプリケーションがバラバラの通信方法で実現されることはナンセンスです。現段階ではITSにおける通信システの統一は難しい問題ではありますが、重要かつ必要なことを認識する必要があるでしょうね。 現在はそれぞれのアプリケーションごとに情報レベルも異なった通信システムが存在しています。だからこそ、それらの共通基盤としてのプラットフォームの存在は重要でしょう。と同時にある程度の個別性も大切だと思います。私は、それぞれのアプリケーションのシステムやフォーマットをできるだけ公開していくべきだと考えています。当然、淘汰されて最適なシステムになっていくはずです。その結果、ITSの通信システムやデータフォーマットは統一され、標準化されることになります。そして世界に先駆けてITSを実現することは、同時に情報通信分野における新時代へのパラダイムとなることでしょう。 |