■キーパーソンインタビュー


 着々と実配備へ向けて進むITS。その中でマーケットが形成されるとともに、メーカー側の動きが活発化してきた。昨年10月の日米欧の大手自動車メーカー5社による車載コンピュータの規格統一へ向けた合意もそのひとつ。トヨタ自動車(株)ITS企画部長の長尾哲氏に話を聞いた。



トヨタ自動車(株)ITS企画部長
長尾 哲 氏




規格の統一はITS実現のための最重要ポイント

さまざまな業種で大きなマーケットが期待できる

 −ITSは車にとってどんな意味を持つのでしょうか。

 これまで基本的に“密室”だった車内は、情報通信によって “開放”されることになります。いち早くカーマルチメディアへの道を拓いたのは、カーナビです。単に車の位置を知るためだけに使うのではなく、携帯電話など通信の車載用端末としても活用することで、車内と外部とのコミュニケーションを実現させました。
 これはITSの視点でも大きなポイントであり、自動車文化に新たな変革の時代を到来させました。自動車は移動する手段として一面的に捉えられてきましたが、本格的なITSの時代を迎えることで、この概念が多様に広がってきたのです。
 具体的には、移動空間でありながら、オフィスや家庭と同じように外部と自由にコミュニケーションできる空間となることです。つまり、マルチメディアの波が、オフィスや家庭からさらに移動体としての車にも押し寄せてきました。カーマルチメディアの進化は、車メーカーだけではなく、コンピュータメーカー、電機メーカーなどさまざまな業種で大きなマーケットが期待できます。




カーマルチメディアの環境を整えるには、メーカー間の協調が不可欠

 −カーマルチメディアの進展にとって課題はありますか。

 現実的には、クリアしなければならない課題があることは事実です。ひとつは、インターフェースです。車がパソコンとモニターの機能を搭載するオートパソコンとなり、ドライバーとインターフェースしながら運転をサポートしていくわけですから、ドライバーの使い勝手を優先しなければなりません。車に搭載するハードやソフトがバラバラでは使い勝手が悪いので、ドライバーが利用しやすいように、共通の仕様を考えることが必要になってきています。
 大きな枠組みで考えれば現在は、実装備へ向けたマーケティングの前段階で、技術的な問題をどうやってクリアするかがポイントともいえます。この時点ならば、ハードとソフトに関する共通化が可能なわけです。

 −昨年10月にゼネラル・モーターズやフォード、ダイムラー・クライスラー、ルノーにトヨタ自動車、5社が、車載コンピュータの規格統一に向け合意しましたね。

 ええ、この合意もカーマルチメディアの進展が背景になっています。例えばソフトを含め、マルチメディアの技術革新のスピードは、車のモデルチェンジするサイクルでは間に合わないほど非常に早い。その時点時点で最先端の機能やソフトを採用していくと、車のラインナップとの関係が崩れてくることも予想されます。こうした課題を解決するためにも、規格の共通化が必要なのです。ソフトをフレキシブルに新しいバージョンへ書き換えることで対応できるからです。
 車内でのマルチメディア環境を整えるには、通信システムひとつとっても単独企業では進められない部分が多く、最初から協調して共通のプラットホームを整備すべきです。




スマートカーの開発と協調してスマートウェイの実現を

 −道路インフラとの関係については、どうお考えでしょうか。

 ITSの大きなポイントは、車を単体としてでなく、交通の集合体としてとらえる点だと考えます。車が単体でできる問題解決には、正直いって限界があり、道路と車が協調して問題の解決を図ることが必要です。道路インフラがカーマルチメディアのプラットフォームとしても機能することが望まれます。
 最近、ITS仕様の“スマートウェイ”、“スマートカー”というコンセプトが出てきました。その言葉からもわかるように、車と道路はこれまでとは違った、濃密な関係にならざるを得ません。スマートウェイは全国の道路を対象にしていますが、早く規格を決め、できるだけ普及して、どこを走ってもその便益を享受できるようになって欲しいですね。
 現在日本国内を走る自動車は7千万台。これらの車とすべての道路を一気にスマート化するのは至難といえるでしょう。とはいえ、道路と車を高度化して協調させるITSによって、快適で安全な道路環境を目指していかなければなりません。
 スマートウェイが今後、ITS社会の実現を加速させるものと期待しています。



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